Peach Angel Fantasy (ブナンザ親子+四カカ) 第1話

ミナトとカカシは、厳しい任務を数こなし、遅くまで残業もしたり、やっとのことで休暇を遣り繰りして、
三代目から一週間の夏季休暇をもぎ取った。
今年は豪華に南国のリゾート地みかづき島でバカンスと決めて、準備万端、後は飛雷神の術で飛んで行くだけだ。

「さっ、カカシ〜 みかづき島へ飛んで行くよ〜! しっかり掴まっててね」

「飛雷神の術!」

ボスン! ボスン!

ミナトとカカシは柔らかな芝生の上に着地した。
どこまでも抜けるような青い空、真夏の日差しが眩しい。

「うわあ〜 カカシ、大丈夫? えぇっ・・・???」

ミナトは額に手を翳して辺りをぐるりと見渡したが、巨大な高層ビルが立ち並び、空には数多くの飛空艇が飛び交っている。

「ここどこ? どう見てもみかづき島じゃなんけど・・・」
「先生・・・ あっち・・・」
カカシが不安げにミナトの服の端をぎゅっと掴んで、振り返させると、
そこには、ヘーゼルグリーンの瞳の小さな男の子が不思議そうな顔をして二人を見つめていた。

「お兄ちゃん達、どうやってここに入って来たの? 凄いね、そう簡単にはぼくん家には入れないんだよ」
ミナトは空を指で指して男の子に答えた。
「お空の上から飛んで来たの。 ごめんね、ちょっと道を間違えちゃったみたいで。 ここはどこかな?」
「どこって、アルケイディスだけど」
「アルケイディス? どこの国だろ・・・ どっかで聞いたことあるな・・・」
「アルケイディア帝国だよ!」
「ひぇぇ〜 もしかしてイヴァリースまで飛ばされちゃったの? どうしよう・・・ カカシ」
「先生、アルケイディスってどこなの?」
「一番西の果ての大きな国だよ」
「先生、帰れるの?」
「ん・・・」


困り顔の二人を見て、男の子は父親を呼んで来ようと思った。
「ちょっとここで待ってて! パパを呼んで来るから。 ぼくのパパは飛空艇持ってるから、お兄ちゃん達を乗せて送ってくれると思うよ!」
そう言って、男の子は屋敷に向って走り出した。

「先生、どうするの?」
「一旦木ノ葉まで戻れば何とか帰れるとは思うけどね・・・ まぁ、間違って人のお家に入っちゃったんだからお詫びだけでもしていかないと」

「パパ〜 金色と銀色のお兄ちゃん達がね、お空から降ってきたよ!」
休みだというのに、書斎で仕事をしていた父親は男の子をさっと抱き上げ、頬ずりする。
「おやおや、ファムラン、絵本を読んでて、寝てしまったのかい? 楽しい夢でも見たのかな?」
「夢じゃないよ〜 お庭にお兄ちゃん達がいるから早く来て! 迷子になっちゃったんだって」
ブナンザ家はアルケイディスでも名門中の名門貴族、豪華なお屋敷はもちろん万全のセキュリティシステムが敷かれている。
万が一不法侵入などあれば、すぐさま警報ブザーが鳴り響き、1秒でガードマンがすっ飛んで来るのだ。
父親は有り得ないと思いながらも、男の子を抱き、庭に出てみた。

確かに・・・

金髪の青年と銀髪の少年が芝生の上に立っている。
父親が近づくと、二人共深々と頭を下げ、おじぎをした。

「すみません、道に迷いまして。 間違ってお宅の庭に入ってしまいました。 すぐに失礼しますのでお許しください」
「君、いったいどうやってこの庭に入れたのだね?」
父親は興味津々だ。
「あの・・・ 何て説明したらいいのか・・・ 信じてもらえないかもしれませんが・・・
 実は、私は東の果ての火の国の忍でして、その・・・ 忍術というものを使って、本当は夏休みで南の島へバカンスに行くつもりで飛んだのです。
  しかし、どうも術式を間違えたみたいで、何故か西の果ての国のお宅の庭に着地してしまいました」
「何? 忍術だと? いったいどうやってあんな遠いところから飛んで来れるのだね?」
「まぁ、話すと長くなるのですが・・・」
「ここじゃ暑いな、部屋に上がってくれ」
ミナトとカカシは思わず顔を見合わせた。
「すまない、まだ名前を聞いてなかったね。 私はシド、飛空艇の設計をしている。 息子はファムランだ」
シドはにっこりと笑って手を差し出した。
ミナトはその手を握り、挨拶をした。

「私はミナトと申します。 この子は弟子のカカシです」
カカシがぺこりと頭を下げるとファムランが小さな手をカカシに差し出した。
カカシも少し照れながらファムランと握手をした。

それから屋敷に上がり、リビングに通され、ふかふかのソファーに座った。
カカシは見たこともないような豪華な家具が並ぶ広い部屋にびっくりして辺りをきょろきょろ眺めている。

「折角ここまで来たのだから、ここでバカンスを過ごしていったらどうかね? 近くにフォーンという綺麗な海岸もあるから、
 そこにある別荘に遊びに行っても構わないし」
「カカシ、どうしよっか? 滅多にこんなとこ来れないからさ、夏休みここでもいいかな?」
「うん、オレは先生と一緒ならどこでもいいよ!」

ミナトはシドが悪い人には見えなかったし、先進国の文化にカカシを触れさせてあげるのも良い経験になると思ったので、シドの誘いを受けることにした。
「じゃぁ、お言葉に甘えてお世話になります」
「何遠慮することはない。 この子の兄達は今サマーキャンプに行っててな、ファムランもどこかに連れて行ってやらねばならないと思ってたところだ。
 遊び相手になってくれれば私も有り難い。 では早速さっきの忍術の話を聞かせてくれ。 あぁ、ファムラン何か冷たいものを持ってきて」
「はい、パパ。 カカシも一緒に来る? 美味しいジュースいっぱいあるからね」
ファムランはカカシの手を引っ張ってキッチンに向った。


「こちらの世界でも範囲内の敵を消し去るデジョンという時空魔法があるのだが、それを自分にかけるという原理なのではと私は予想したのだ、どうだろう?
 でも敵ならどこに飛んで行っても構わんが、自分にとかけるとなると恐ろしいような気もするのだが。
 それを君は決めた場所へ飛ばせるというのだろう? それは素晴らしい! 是非、その術式とやらを見せてくれないかね? 
いったいどんな方程式に当てはめるのか。 実に興味深いね」
シドは興奮してるのか、機関銃の様に一方的に話まくっている。

ミナトは腰に付けたポーチから巻物と術式の札を取り出した。
「この忍術も時空間忍術の一つでして・・・」




written by あっきぃ
painted by gule-nana




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