SSSランク任務 (バシュバル+アルシド+???) 第1話

ぶるると枕元の携帯が震えた。

「んん?アラームは掛けてなかったはずだが・・・メールか?」
昨日の晩は結構飲んだから、まだゆっくり寝ていたかったのだが、意地悪な振動音で起されてしまった。バルフレアは手を伸ばし、携帯を手に取り液晶画面を覗いた。
「まだ9時じゃねぇか・・・」
酒が残っているのか、頭が少しくらくらする。

<おはよう!お目覚めかね?11時に、迎えを行かせるから、君も正装して、カカシさんと一緒に宮殿に来るように。
 急に国賓がみえることになったから、宜しく頼むよ。バッシュより>

「はぁっ!? 何でオレまで行かなきゃならないんだよ? 国賓て誰だ? 何か・・・すご〜く嫌な予感がする・・・」
ちっと舌打ちして、バルフレアはベッドから渋々と起き上がった。
カカシが寝ているゲストルームに向かい、コンコンとドアをノックした。

「カカシ〜起きてるか?」

返事はない。
「入るぞ〜」
そっと部屋に入りベッドのそばに歩み寄ると、カカシはスースーと寝息を立てて、気持ちよさそうに爆睡している。
ほっぺをつんつんと突いてみるが、起きる気配は全然ない。
「まっ、いっか、11時に出るんだからな、もう少し寝かせといてやるか」
バルフレアはそのままバスルームに戻り、残っているお酒を洗い流すかのようにシャワーを浴びた。
「あぁ、たりいな・・・」
バスローブを引っ掛けて、クローゼットの扉を開けた。
「あのクソガキと飯食うなんて、考えただけでも腹が立つっていうのに、正装だと?
 ったく、ふざけんな!」
適当にタキシードを選び、引き出しからYシャツと蝶ネクタイを取り出した。
「あぁ、嫌だ嫌だ・・・こんなの着たら肩凝っちまうぜ」
と、文句たらたら言いながらも、結局は愛しい恋人の頼みを聞かずにはいられない自分に呆れて、バルフレアは、はぁぁと溜息を吐いた。

時計を見ると、10時を過ぎていたので、もう一度カカシを起しに行った。
「カ〜カ〜シ〜」
耳元で囁いたけど、起きそうにもない。 
「カ〜カ〜シィィ〜!!起〜き〜ろぉ〜!!!」
「んん・・・もぅ・・・ちょっとだけ・・・ねっ・・・」
「悪いな、そうも言ってられないんだよ」
バルフレアはぱっと掛け布団を捲った。
背中を丸めて、手を伸ばし、布団を掛け直そうとしたカカシの腕をぎゅっと掴んだ。
それでも、身体を横に向け、まだ寝ようとするカカシの鼻をむぎゅっと摘む。
「ん・・・もう・・・」
諦めたカカシは目を開き、ふわぁと息を吐きながら腕を伸ばして、ゆっくりと身体を起した。
「11時に迎えが来る。オレも行くことになったから」
「そう、バルと一緒なら良かった。オレ一人じゃちょっと不安だったしね」
「ランチのくせに正装で来いだと。ったく、誰かお偉いさんが来るらしい。
 カカシは着るもんあるのか? 無いならオレの貸してやるぜ?」
「あぁ、うん、とりあえず、タキシードは1着持ってきたから。こんなんでいいかな?」
カカシは、クローゼットに掛けてあったタキシードをバルフレアに見せた。
「あぁ、それで十分だ」


しばらくして、二人がきちんとタキシードの支度を整えた頃、ラーサー陛下の使者の来訪を告げる玄関のチャイムが鳴った。
外に出ると、庭の着陸ポートには国賓用の豪華な飛空艇がどんと停まっていた。
王宮までわりと近いので、乗ったと思ったら、あっという間に着いてしまった。

やたらと大きな部屋に案内されると、ジャッジマスターの鎧を身に着けたバッシュが迎えてくれた。
(何を着ても君は似合うな)と、惚れ惚れとした目でバルフレアを見つめるバッシュ。
「すまなかったね」
「ったく・・・ 誰が来てるんだよ?」
そう尋ねられて、一瞬バッシュは言葉に詰まった。
「まっ・・・その・・・突然お忍びでいらしたんだよ。陛下もさすがにカカシさん一人じゃ申し訳ないと思ったんだろう。
それに、君が居てくれた方があのお方も喜ぶと思って・・・いや、私じゃないよ! 陛下が・・・」
しどろもどろに言い訳を言うバッシュ。それもそのはず、バルフレアが、その人物と自分の前で会うことを苦手としていることを知っているからだ。

側近の従者が近寄って来て、会食がまもなく始まると伝えた。
豪華な扉が厳かに開けられた。

皆、頭を下げ、お辞儀をした。ラーサー陛下と国賓がバルフレア達の前で立ち止まった。
頭を上げるとそこには・・・
ラーサー陛下が、
そして、その隣には・・・


「これはこれは、バルフレア君、ご機嫌麗しゅう」
と、大げさな身振りでサングラスを取り、胸に手を当て、会釈をした。

「ちっ・・・こいつか・・・オレ帰る」
バルフレアはぷいと横を向き、視線を合わせようともしない。
振り返ろうとしたバルフレアの身体をバッシュが必死に正面を向けさせている。
「今日は、ラーサー陛下が君のご友人と会食されると伺ったので、私もお邪魔させていただくことにしました。こちらの方がカカシさん?」
突然、その男性はカカシの前に跪き、カカシの手を取り、手の甲に口づけをした。
「火の国には美しい花が咲くものですな。はじめまして、私は、アルシド・マルガラスと申します」
カカシはこの状態が何が何だか全く理解出来ないでいる。目を真ん丸くして只呆然と立ち尽くしていた。
「カカシさん、一度ロザリアへおいでください。わがマルガラス家発祥の地、夕日にきらめく“琥珀の谷”をご案内しましょう」
フリーズしたまま、カカシはそっと目だけをバルフレアの方に向けた。
バルフレアはカカシの肩をぽんぽんと叩きながら、
「カカシ、スルーしろ」
と、笑って席に着いた。
「さぁ、みなさん、どうぞお掛けになってください。
カカシさん、驚かせて申し訳ありません。バルフレアさんのお友達とお昼をいただくと言ったら、アルシドさんが是非ご一緒にとおっしゃったので。
バルフレアさんもお忙しいところ、お呼び立てして、すみませんでしたね」
ラーサー陛下は、にっこりと微笑みながら、皆の顔を見回した。
「カカシさんお一人でアルシドさんのお相手をしていただくのも、少し・・・と思いましたので。でも、大勢でお食事をした方が楽しいですからね〜」
バルフレアは、まだ頬を膨らませて、むすっとしている。
「おぉ、こんなにお美しい、まるで天使のようなお二人を前に食事をいただけるなんて光栄の至りですな」
アルシドはにんまりと怪しげな笑みを浮かべている。
「お二人は、どのようなご友人なんですか?」
「はぁっ? アンタに関係ないだろ」
相変わらずのバルフレアの口調にカカシはヒヤッとする。

(えぇ!?確か国賓って言ってたよね?)

「あっ・・・その、何ていいますか、小さい頃からの付き合いでして。バルフレアのお父様には大変お世話になりましてね。今でも仕事でこちらに来る時は、寄らせていただくんです」
「カカシさんは東の大陸ではとても有名な忍なんですよ〜五大国一のお力をお持ちだとか」
ラーサーがアルシドにカカシのことを教えてあげている。
「いえいえ、そんなことは・・・ちっぽけな里のしがない忍です」
カカシは恥かしそうに頭を掻いた。
食事が運ばれて、会食が始められた。

「今回もお仕事でこちらに?」
アルシドは、カカシに興味深々で、次から次へと質問攻めだ。
「はい。ラーサー陛下に火の国の親書をお届けにまいりました」
「もう、すぐに帰られるのですか?」
「おい、アンタには関係ないだろ? カカシはこれからオレとバカンスなんだ」
バルフレアがイラつきながら口をはさむ。
「そうですか・・・」
アルシドは、意味ありげに笑った後、後ろに控えていた美人秘書に向って顎をくいと上げ、
自分の側に呼び寄せて、耳元でこそりと何やら囁いた。

秘書はすぐさま部屋の後方に下がり、ノートパソコンを開いて、物凄いスピードでキーボードを打ち始めた。






written by あっきぃ
painted by gule-nana




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