SSSランク任務 (バシュバル+アルシド+???) 第3話

「それでは、カカシさん、宜しくお願いしますね」
「はっ、はい、しっかり護衛させていただきます。
 その前に、忍服に着替えたいのですが。
 この服では、任務につけませんので」
「え〜っと、護衛用の服は、こちらで用意させていただきますので、ご心配なく」

アルシドは、カカシの右手をそっと握り、手の甲をつつつっと撫でた。

「え、あっ、あの・・・万が一の時のために、忍服には色々な忍具が装備されていますので」
「まぁ、その辺はご心配しなくて結構ですよ。SPはちゃんとおりますから!
 さぁ、参りましょう!」

アルシドは、カカシとしっかりと腕を組み、歩き出した。
「ちょっ・・・こんなんじゃ護衛なんて出来ませんよぉぉぉ〜」
何が何だか分からないまま、着替えも出来ずにカカシはアルシドに引っ張られて行く。
カカシに護衛をと言いつつ、SPはちゃんとつけているのだから、カカシの護衛任務なんて、実のところ、カカシと戯れたいという、口実にしか過ぎないのだ。
部屋を出て、来賓用の発着ポートから、飛空艇に乗せられて、宮殿を後にした。

しばらくすると、飛空艇は、高層ビルの屋上にあるポートに到着した。

「さぁ、どうぞ、着きましたよ」
専用エレベーターで下に降りると、そこは、アルケイディス屈指の所謂皇室御用達の高級テーラーだった。
店員が深々と頭を下げて、アルシドを迎える。

「これは、これはアルシド皇子様、いつも当店をご贔屓くださり、恐悦至極に存じます」
アルシドがソファーに座ると、さっと、店員がコーヒーと分厚い生地見本を目の前に置いた。
「こちらが、今年の新作でございます。今年の流行色はパープルでございます。
 アルシド様なら、何をお召しになってもお似合いでございます」
アルシドは、店員の言うことは気にもかけずに、ぱらぱらと生地を見ている。
「さてと・・・」
怪しげに微笑むアルシドは、サングラスを頭の上にずらし、隣に立っているカカシの身体を、頭のてっぺんからつま先まで、ゆっくりと舐めるように見下ろした。
「そうですね・・・」
そのアルシドの意味あり気なねっとりとした視線にカカシの身体は一瞬強張る。
握られた拳に思わず力が入ってしまった。
アルシドは、そんなカカシの動きを見逃さない。
「ご心配なく、何も取って食おうという訳じゃないんですよ。
 カカシさんなら、何がお似合いかなと思いましてねぇ。
 まぁ、お美しいから、何を着てもお似合いだろうなと」
「そ、そんな・・・」
カカシは顔を引きつらせて、暑苦しいアルシドの視線を必死にこらえた。
顎に手を当てて、カカシをちらちらと見ながら、頷き、ペンで印を付けている。
店員もアルシドの視線の先のカカシが気になっているのだが、もちろん、アルシドが何か言うまで、聞くことは出来ない。

「う〜ん、まぁ、こんなところですかね。私と彼の礼服を印をつけた生地で。
それから、ウチのコスチュームを。いつものデザインのね。
急いでいるので、明日までには、出来ますよね?
そして、今晩のは・・・間に合わないから、ここにある中から、選んでいきましょう」
アルシドは、オーダーをすると満足げに笑って、生地見本を閉じてテーブルの上に置き、既成の洋服が掛けられているコーナーへと向った。
「かしこまりました。あの・・・失礼ですが・・・こ、こちら様の採寸の方は・・・?」
「あぁ、もちろんしてください。ぴったりのものをね、お願いしますよ。
 カカシさん、申し訳ない。ちょっと採寸させていただきますよ」
「えぇっ!? そ、そんな・・・こと・・をしていただく・・・なんて・・・あっ、あの・・・」

カカシは、突然のことに何て言葉を返していいのか分からず、うろたえた。
今までも、大名の警護や、五影会議のVIP警護なんて任務は数え切れないくらいこなしてきたのに、今回は何だかケタ違いのような気がする。
大国の皇子のなのだから服もそれなりのものを身に着けていなくてはならないのかもしれない。
依頼者の命令は絶対であり、やはりここは大人しく従うしかないのだ。

一礼をして、店員が素早くメジャーをカカシに宛てて、測り始めた。
アルシドは、ハンガーから数点取って来たシャツをカカシの前に翳し、頭の中でカカシに新しい服を着せ楽しんでいるようだ。
「いいですね〜 やはりお美しいお方は何を着てもお似合いになる」
むふふと、いやらしい笑みを浮かべ、採寸されているカカシにさらに暑苦しい視線を送った。


採寸を終えテーラーを出ると、今度は、また、飛空艇に乗せられて、100階はあろうかと思われる目も眩むような超高層ビルに連れて行かれた。
そこは、帝国でも最高級のホテルだった。
普通なら、国賓待遇のアルシドは、警備の都合上、迎賓館に泊まられなければならないのだが、ほとんどが公式訪問ではなく、お忍びで遊びに来ているので、ホテルに泊まることが多い。
中でも、このホテルの最上階のワンフロアーのインペリアル・スィートを貸し切って、過ごすのがお気に入りなのだ。
お忍びと言っても、見た目が派手なのに、さらに、ど派手な服を来て、大きなサングラスをしているのだから、よけいに目立ってしまう。
だから、アルシドが一般のホテルに宿泊する時はホテルマンを装ったジャッジが大勢警備に就くのだが、今回は、カカシ一人でよいと、それも断ってしまった。
ロザリアから連れてきたごく僅かなSPとカカシだけで、護衛をするということがどんな意味なのか、カカシはまだ知る由もないのである。

いったいいくつ部屋があるのか分からないほど、広い広〜いスィートルームにカカシは呆然と立ち尽くした。
何もかもが今まで見たこともないような豪華な調度品で上品に整えられている。
アルシドはふかふかのソファーにボスンと腰を降ろすと、手招きをしてカカシにも隣に座らせた。

「カカシさん、お疲れになってないですか? 遠いところからいらっしゃったんですものねぇ。
 私はこれから、お肌の手入れをしますので。カカシさんも是非ご一緒にどうぞ」
「はぃぃ!?お、お肌の手入れですか?」
「そうですよ、今晩、カカシさんとお食事をするのですからねぇ。磨かないと失礼になりますから。
 まぁ、カカシさんは何もしなくても、お肌もすべすべでお美しいですけど。
 エステで、パックでもしてもらえばさらに、つるつるになりますよ〜
 何、ただ横になっているだけでいいんですから。
 そして、身体の方も、マッサージしてもらってね。
 もう、気持ちよくって、私なんかいつも寝てしまうんですがね」
「えええ〜エステですか? エステって、確か女性が・・・」

カカシには、エステと言われても、お面のような白いパックをした女性しか思い浮かばなかった。
「ご心配なく、この部屋に呼ぶのですから、誰に見られることもありませんので、恥ずかしいようなことはありませんよ〜」

ピンポ〜ン

「ほら、もう来た」

美人秘書が、何をするのにも分刻みできっちりとスケジュール管理をしているので、1分1秒無駄なく、事が進んでいくのだ。
若い女性のエステシャンが二人入って来て、アルシドの前で深々と頭を下げた。

「いらっしゃ〜い。今日はお友達もいるから、いつものコース、二人分でヨ・ロ・シ・ク・ネ!」
「はい、かしこまりました。アルシド様」
「ぷるぷるコラーゲンをたっぷりね〜 それから、彼は長旅でお疲れのようだから、足のマッサージをしっかりしてあげくださいね〜」
「いや、オ・・・オレは・・・結構です」
「そんな遠慮なんてしないで」
と言って、アルシドはカカシの腕を取り、ぐいっと立ち上がらせた。

「ではスペシャルエステルームにどうぞ〜」
カカシの言葉はあっさり無視して、アルシドはカカシを隣の部屋に連れて行った。

エステなんて、生まれて初めてのカカシは、何をされるのか不安な気持ちでいっぱいになったが、「これも、任務、任務」と心の中で言い聞かせ、渡されたバスローブに着替えた。
こうなったら、まな板の上の鯉だと、カカシは覚悟を決めた。
「こちらにどうぞ」と、案内されたベッドに身体を横たえた。
何が何だか分からないまま、顔中を、柔らかな指が滑るように、優しく動いていく。
良い香りのするパックを塗られ、蒸しタオルをかけられる。
そして、今度は、ふくらはぎや足の裏をマッサージされる。

(あ・・・何これ・・・?気持ち・・・いい・・・かも)

ツボを刺激され、あまりに気持ちよさの思わず、声が漏れてしまう。

「ん・・・」

カカシは経験したことのない感覚に身をゆだね、いつのまにか、寝入ってしまった。

「おやおや、お疲れのようですね。どうぞ、ゆっくりおやすみなさい。夕食の時間になったら、起しにまいりますので」

エステルームを覗いたアルシドは、にんまりと笑って、音をたてないように扉をそっと閉めた。







written by あっきぃ
painted by gule-nana




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